ばりぼりばりぼり。何か固いものを盛大に噛み砕く音が辺りに響いている。
聞くだけならばそれは中々に心地のよいものだろう。しかし、その音の発生元に向かいあった少女は心地よいというには程遠い心境にあった。
ばりぼりばりぼり。リズミカルに、しかし永遠に続くとさえ思えるその音は彼女に恐怖しかもたらさない。

ちらり、伺うように向かいに座る友達を見た。学年でも美人と評判の友の顔は無表情だった。その青い目は、据わっている。本気で怒っているのだろう。
だからこそ、こうして大好物の芋けんぴを貪っているわけなんだろうが。しかし怖い。怖すぎる。あぁ、でも思えば昔からそうだった。
機嫌が悪い時、友はこうして彼女の家にやってきては芋けんぴを食べるのだ。しかも、何袋も。今日だって、既に二袋目に突入中だ。

居たたまれなさから、彼女は手にした自分の湯呑みに目線を落とす。そして、考える。
何があったのだろう。自分が、何かしたのだろうか。いや、たぶん何もしていないはずだ。だがそうやってどんなに考えても、友の怒りの理由は見えてこない。
ため息の一つでもつきたい気分だ。しかしこの雰囲気でそれが出来るだろうか。本格的に彼女は居たたまれ無くなる。と、ちょうどその時。


「いいよなぁー。ツナは」


本日三袋目の芋けんぴを開きながら。ため息ついでに告げてきた幼なじみに彼女―――ツナははたはたと瞬きをした。