ため息混じりに告げられた言葉は、しかし後には何も続かなかった。三袋目の芋けんぴを彼女はやはりばりぼりと貪り始めた。だが、せっかくこのある種恐怖状態から脱出できるチャンスを彼女から貰ったのだ、逃す手はない。ツナは無心に芋けんぴを食べ続ける幼なじみを若干怖いと思いながら、それでも思い切って尋ねてみた。


「え、えと、あの、その。な、何が?」


ツナの言葉に、彼女の幼なじみは手をとめ、はたと彼女を見やった。青い目がじっとツナを見つめる。


「何がって、何が?」

「いやだからっ、ウィンリィが今言ったじゃん。オレのこといいなーって」


だからそれは何なのかなーと疑問に思って、とツナはこてっと小首を傾げた。彼女の背中にはたらたらと冷や汗が流れ落ちている。視線が、怖い。見つめられていた青い目は、質問を投げ掛けた途端、きっ、と鋭さを持ってしまっていた。あぁ、何でオレこんな目にあってんだろう、とツナは自分の不運さに嘆いた。嘆いたところでどうにもなるわけではないが、それでも嘆かずにはいられなかった。だって怖い。
しばらく沈黙が続く。だが、少し経てば青い目はその鋭さを潜め、静寂は静かに破られた。


「…………だってさ」


ぽつり、とウィンリィが呟く。


「ツナにいっつも迷惑掛けてばっかでうざくて短気でバカで性格捻くれててあたしなら絶っっっっっ対ヤだけど、獄寺…………優しいじゃない?」

「え、あ、うん、えと、え、えーと?」


一気にまくしたてられて、ツナははたはたとその瞳を瞬かせた。当のウィンリィは自身に出された湯呑みの中身を飲み干して、再び芋けんぴに取り掛かろうとしている。すべてを言ってやったという雰囲気だ。
何故今獄寺の話になるのだろう、とツナは頭を捻った。先程から痛いほどわかるウィンリィの険悪な様子とは、まったくもって関係ない話題のはずだ。それなのに何故?とツナは疑問に思ってしまう。考えてもわからない。だが人より精度の悪い頭で考えて考えて考えて考えて、そこでようやく彼女はあっ、と声を上げた。


「ねぇウィンリィ。エドと何かあっ」


た?と聞こうとして、だがツナは出来なかった。先程より剣呑な目付きな青い瞳と目が合ったからである。