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「つ、つまり…」
ツナはずきずきと頭全体を覆っている痛みを懸命にこらえながら、口を開いた。
「つまり、あの、ウィンリィはいつだかわかんないけどエドとデートの待ち合わせをしてて」
「………」
「で、その時にすっごいお洒落していって」
「……………」
「でもエドがそれに全然気付いてくれなくて、」
「…………………」
「それで、あの、その。怒っている……と?」
真実を確認するための言葉をすべて並べ立ててから、ちらり、と伺うようにウィンリィを見やる。すると、彼女の頭上には、普段決してありはしない暗雲が見えた。空色の瞳はいつものように透き通ってはいず、今しも雷が落ちそうなほど不機嫌なものだった。
ひ、とツナは身を強ばらせる。今さっきまで口にしていた、彼女の状況を確かめたいと思っての質問は、鬼門であったのであろうか。ツナは身体全体がだらだらと冷たい汗をかいていくのを感じた。だが、そんな親友の怯えている状態には目もくれず、ウィンリィはその眼光を鋭くした。
「そうよ」
低くドスのきいた声が部屋に響く。ツナは身を竦ませるが、しかしやはりそれを気にするでもなく、ウィンリィは再びダンっと机を叩いた。
「そうよ。そうよ。そうだけど、でもッ。それだけじゃないのよ!」
感情が昂ぶった声がツナの鼓膜をびりりと突く。ツナはその衝撃にも驚いたが、しかしそれ以上にウィンリィの言葉に驚愕してしまう。思わず、へっ、と聞き返してしまった。
「え、それだけじゃないって……?」
ぱとりと瞬きをしながら親友の顔を覗き込む。ウィンリィは未だ暗雲を頭上に立ち込めさせていた。
「服装を誉めないのはまぁいいとするわ?いつものことだしっ。でもだけどあいつ、肝心の待ち合わせ時間に1時間近くも遅刻してきたのよ?」
「うわっ、それは……」
「お陰で予定ががパァよ。それにそのあと、前から見に行きたいって言ってた映画に行ったんだけど、あいついびき掻いて爆睡するしッ」
「あ、あぁ……あぁ」
「最ッ悪よ、最悪っ!どれだけこっちが恥かいたかっ」
未だ冷めやらぬ怒りで、ウィンリィはあぁっもう!と地団駄を踏んでいる。ツナは乾いた笑いしか浮かんでこなかった。心の底から彼女に同情してしまう。掛ける言葉すら見つからない。
だが、それでもウィンリィを宥めようと何か声を掛けようとして、それをウィンリィ自身の言葉によって遮られてしまった。
「思わずひっぱたいてそのままここに来ちゃったけど、いい気味よ」
今頃困ってればいいんだわっ、と独り言のように呟いている。ツナはその言葉に、はたと動きを止めた。よくよく考えれば、待ち合わせをして私服でデートなど、学生時分ではたいてい休日でしか行えない。昨日は金曜日であるから、無論その可能性は潰える。先週の休日であれば、月曜にでも強制的にその彼女の文句を聞く機会があっただろう。今週の休日は今日である土曜日が初めてのことである。そもそもウィンリィは「エドをひっぱたいてそのままここに来た」と言っている。それはつまり、彼女の不機嫌の要因がツナの家に来る直前にあったことを示していて 。
「え、えぇ っ!?」
ツナが困惑の声を上げるのと丁度同じタイミングで、彼女の携帯の着信音がけたたましく鳴り響いた。
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