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電子的な旋律、リズミカルに編曲された「森のくまさん」が部屋に響き渡っている。出所はもちろん、ツナの携帯だ。しかし軽快に流れるそれは、お世辞にも今この時この瞬間に合っているとは言えない。むしろ、真逆だ。ひぃ、とツナは心中で思う。ダウンロードをするのが面倒だし何よりやり方がよくわからないから、と内蔵のそれを着メロにしたのは他ならぬ彼女だったのだが。なんなのだろう。なんで、オレはこんなアホくさい曲を着メロなんかにしたんだろう。そう、過去の自分を今更ながら恨めしく感じる。
しかし、彼女がそう思う間も「森のくまさん」は鳴り続けている。そしてそれにかぶさるようにまた、ぼりぼりばりばり。ウィンリィがいもけんぴを噛み砕く音が聞こえ始めた。その合奏はとんでもなくシュールだった。いや、もうはっきりいって恐怖以外のなんでもない。つうーっと背中に嫌な汗が流れるのを、ツナは感じる。恐る恐る向かいに座る親友を見た。
と、不意にいもけんぴを貪る青い瞳と視線が、ぶつかる。
「………ツナ」
「は、はいっ?」
「いいの?」
ぱたり、といもけんぴを口に運ぶ手を止めて、ウィンリィはツナに告げてきた。
「へ、はっ……な、何がっ?」
ツナは言葉を返した。本気で意味がわからなかったからだ。しかしそうやって聞き返しながらも、ひぃ、とツナは若干逃げ腰になる。こちらを見る親友に対しての恐怖ゆえの無意識からだ。しかしウィンリィはというとそれを気に止めた様子は無い。やはりじっと鋭い視線を送りつつ、また告げた。
「いや、だから電話。出ないの?」
「………うぇ?」
拍子が抜けたような声をツナは出した。ウィンリィの言葉の中身が意外といえば意外だったからだ。しかし、当然とも言えるそれに、直ぐ様あ!と小さく声を上げる。いくら色々衝撃的な事実に動転していたとはいえ、電話に出ることを忘れていたなんて。大変だと急に彼女は慌て始めた。電話がもし大事な用だったらどうしよう。ぱたぱたと周りを探す。しかし、「森のくまさん」はすぐ近くに聞こえるものの、その姿は中々見つからない。お菓子の袋の下や、机の下。はたまた座っていた座布団を引っ繰り返しても携帯は見つからなかった。そのことに、ツナはますます慌てる。もちろん見つからないことも要因だが、こちらを見ている青く鋭い視線が、彼女をそうさせていた。寧ろそっちが大だ。
ああ、もうホント早く見つけなきゃ。ツナの心はそれだった。だって、ウィンリィ絶対怒ってる。絶対、怒ってるよ。ううぅ恐い!そればかりだ。
「……かばんの中じゃない?」
慌てるあまり、不審な程きょろきょろとしていたツナの耳に、呆れたような声が聞こえた。そこでまたツナは、あっと小さく声を上げる。そういえば、昨日学校から帰ってきてそのままだった気がする。はっとして、床に転がったままの通学用かばんをツナは掴んだ。そして、がさごそと中を漁る。と、軽快な「森のくまさん」がやっとその姿を現した。しかしツナは慌てたままだ。なので発信者が誰なのかを確認することもせずに通話ボタンを押した。
「……も、もしもし!」
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